民間冒険記〜何が起こっても不思議じゃない〜

ハァッ……ふう…
息が切れる。

俺の前にいるのは奴で
奴の前にいるのは俺だ。

向かい合っている。奴と。

かれこれ何時間になるだろうか。

自分の体は傷だらけで、
奴はほぼ無傷に近い。

両手で持っている剣が汗で滑りそうになる。
だがそんなことかまってられない。

民間:くそっ!
奴:もう止めにしないか?戦っても俺が勝つのは明白だ。
民間:まだだ!
奴:俺にもスケジュールってもんが詰まってるんでね。

剣を持つ手に力が入る。
それを感じたのか奴は杖を構える。

その瞬間、奴の杖から黒い弾のようなものが高速で発射された。
間一髪でそれをよけ、奴との間合いを詰めようと前進する。

以外にも無防備な奴の体めがけて剣を振る。

もう闇雲だった。

だが、奴はそれを待っていたかのように
この近距離で俺の腹めがけて三発の黒い弾を発射する。

民間:くそ!!

当然よけれるはずもなく、
当たり、吹っ飛び、転がった。

少し経ってから腹に激痛が走る。
奴との力は明白だ。

だが俺は奴と戦わなくてはならない。
倒さなくてはならないという思いが、
何度も俺を立ち上がらせる。

そして考える。
奴を倒せる突破口は何かと。

民間:そうか!そういうことだったのか!
奴:どうした?俺を倒す突破口でもあるのか?
民間:ああ。あるさ、見せてやるよ!その突破口をな!

俺の握っている剣に光がまとい始める。
やがてその光は剣を包みこむ。

民間:さぁ…そろそろ終わりにしようか!

洞窟の中に振動が響き渡る。










一週間前のことだった。
俺は平和なシグナスライフを送っていた。
だがその日から俺の人生は狂った。
狂わせた元凶と言っていいのがコイツ。
ナイソハートだ。
俺は毒舌なアイツが前から好きではなかった。
好きか嫌いかではっきり答えろといわれれば
即座に嫌いと答えるだろう。

そんな彼が与えてきた任務は、
「モンスターの様子がおかしい。ちょっと調べてきてくれないか?」
だけだった。
その言葉だけで
俺の人生は一変してしまったのだ。

俺は彼のいうとおりに、
ヘネシスまでモンスターの具合を見に行った。
そこにあったのは驚愕の事態だった。

俺の目に映ったのは、
メイプルキノコがヘネシスの住民を襲っている光景だった。
俺は自分の目を疑った。

民間:あんなおとなしいメイプルキノコが人を襲うなんて…
住民:おお、騎士団のお方。
   あの忌々しいキノコをどうにかしてくれんかね?
   あいつのせいで子供は怪我するし、
   夜もろくに眠れん。
民間:現段階ではなぜ暴れているのかわかりません。
   なので今彼らを攻撃することはできません。

そういうしかなかった。
俺はメイプルキノコを攻撃できない。
無闇に攻撃したら胞子が飛び散ってしまう。
俺には胞子がトラウマなのだ。

なぜなら、
俺は騎士になりたてのころエレヴから面白半分で飛び出したのだ。
ビクトリアアイランドに広がる絶景は
エレヴで育った俺にとっては、生まれて初めて見た絶景だったのだ。
そこで冒険してみることにしたのだが、
これも面白半分でキノコを攻撃した。
だがそれが運の尽きだった。
それはメイプルキノコだったのだ。
攻撃されて怒ったメイプルキノコは、
仲間をよんで皆で俺に向かって胞子を撒き散らしたのだ。
その後、俺は意識を失い、気がついたら
目の前にナインハートがいた。
そこでナインハートにかれこれ3時間くらい説教されたのだ。
つまり俺はその日にキノコの胞子を嫌いになり
さらにはナインハートも嫌いになったのだった。

何もできない俺に、住民たちは期待のまなざしを向けている。

どうする。どうする?俺!!



〜続く〜